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年齢不詳な若人が唄の話を中心にアレコレと・・・


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ひとりの名優

2月11日は私にとって忘れてはいけない日である。
今年、玉置宏が亡くなったということもあるが、昭和57年にはかの国際的名優/志村喬も没している。

忘れてはいけない、と言いつつも私はすっかり失念していた。
それを気付かせてくれたのは知人からの報せである。

昨年末、志村喬には大いに唸らされた。
スカパーのTBSチャンネルで、志村氏が出演した「家族熱」というドラマが再放送された。
脚本向田邦子。出演に浅丘ルリ子、三國連太郎、加藤治子、吉行和子に志村喬という顔合わせでは見ないわけにはいかない。
(なお、他の出演者には三浦友和、吹雪ジュン、宝生あやこなど)

名作、というにはあからさまなテコ入れが見受けられるし、最終回のオチはとってつけた感があり、ドロドロ路線の昼ドラという趣があったが、それらツッコミどころをカバーするように最期まで引っ張ったのは向田がノって書いたパート及び加藤治子、志村喬の名演。

志村喬は妻に先立たれた隠居、悠々自適の身であったが最近恋人が出来た…という役どころ。
コミカルさと哀しみと威厳を兼ね備えて、うってつけの役。
見逃してしまうような一瞬にハッとさせる芝居をしていたりもする。
いぶし銀、という言葉はちょっと違う気がしてならない。何かいい言葉が無いかと思うのだが語彙力が無いのでパッと浮かばない。
職人藝の粋、とでも言おうか。
向田ドラマでいうならば「冬の運動会」+「あ・うん」÷2という感じか。
最期は浅丘ルリ子と加藤治子の女の情念対決を収集に罹るも老齢の身には耐えられず亡くなる。
志村喬、既に肺気腫に犯され、入退院を繰り返していたはずだが、病人の顔では無いし、その影は微塵も無い。恐ろしいほど。最近の俳優が束になってかかっても敵わぬ、見事な演技。
志村喬は映画俳優だが、テレビドラマでも得難い逸材である。

加藤治子はある事情があって離婚したが、ふとしたきっかけから元夫/三國連太郎に関係する情報を得て、連絡を取るようになり…という役。
最終的に精神の均衡を崩すのだが、そのキチガイっぷりが恐ろしい。
後半は主役だった浅丘ルリ子よりも目立ち、どちらが主役か判らない状態に。あきらかに加藤治子に入れ込んでます、向田。
このドラマにおける加藤の演技はもう少し語られて良い。
加藤治子の女優史に遺る名演と信じている。

やはりドラマは脚本/演出もさることながら、やはり役者が良くなくてはいけないと実感させれる作品である、この「家族熱」、志村喬ファン、加藤治子ファンは必見の作品だろう。

―――
志村喬の評伝は澤地久枝が「男ありて」という題名で出版している。
こちらもなかなかの名著であり、現在絶版であることが惜しい。
加筆/修正の上で、どこかの文庫に入らないものだろうか。
「男ありて」は志村主演の映画、テレビドラマから取られている。
志村自身も気に入っているそうだが、残念ながら未だに視聴チャンスが無い。いつかは…と思っている。

澤地は志村喬夫妻と、親子のように親しい仲であったという。
向田邦子、植田いつ子と三人娘(?)として交際しており、その関係から澤地が執筆することになった。
澤地といえば哀しみを秘めた女の一代記や戦争関連で知られる作家であり、異色といえば異色の取り合わせである。
が、よく読んでいくと志村のこともさることながら本書のもうひとりの主役は志村喬/夫人、島崎政子なのである。
そう、ミスマッチなどではなく面目躍如。
政子夫人は筆が立つ人であり、澤地は最初政子夫人に書かせようとしていたが、どうしてもウンと言わず、じゃあ私が…ということになったらしい。

政子夫人だが、後に「美しく老いたし」という随筆集を出版している。
この本の存在はまったく知られていないが、なかなかの好著なのだ。
「男ありて」読了後に、こちらへも目を通すと志村夫妻どちらもファンになること請け合い。
天真爛漫で、芯が強くて、洒落っ気があって・・・こう老いたいものである。

「お前にはえらい目にあわせたかけた…もう4、5年楽してからおいで」
と言われた政子夫人、それから23年、約四半世紀を生き、2005年に92歳の大往生を遂げた。膵臓癌が判ったときには既に手遅れであったそうだが淡々と「90まで生きたし、おじちゃんにも逢えるからいいかなと想うんだけど、死にたくないなあ」と語っていたという。

改めて、澤地女史に、この政子夫人についても記して頂いて「男ありて」を世に出して欲しいと思わずにいられない。
河出文庫か、ちくま文庫か、勿論出版元の文春文庫でもいい。
出版社の文庫担当者には考慮をお願いしたい。
by hakodate-no-sito | 2010-02-12 21:35 | 古今俳優ばなし