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年齢不詳な若人が唄の話を中心にアレコレと・・・


by hakodate-no-sito

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さよならの代わりに

初めて買ったシングルレコードがお千代さんでした。
初めて遠くですれ違った芸能人がお千代さんでした。
初めて複数枚CDを買った女性歌手がお千代さんでした。

「からたち日記」が大好きでした。
「愛のさざなみ」が大好きでした。
「すみだ川」が大好きでした。
「鳳仙花」が大好きでした。
「今日も初恋」が大好きでした。
「りんどう峠」が大好きでした。
「美しきは女の旅路」が大好きでした。

涙の力を教えてくれたのがお千代さんでした。
純情の素晴らしさを教えてくれたのがお千代さんでした。
哀しみの美しさを教えてくれたのがお千代さんでした。
大歌手はひとつのジャンルであることを教えてくれたのがお千代さんでした。
実印は他人に預けちゃ駄目だと教えてくれたのがお千代さんでした。
人を喰いものにするヤツが世の中には沢山いると教えてくれたのがお千代さんでした。

聴き手が、歌い手の歌声の衰えとどう向き合っていくか。
一番最初に考えさせられたのがお千代さんでした。
お労しいという感情を教えてくれたのがお千代さんでした。
下り坂とは何かを教えてくれたのがお千代さんでした。

無知と無垢と背伸びとで、見て聴いて読んで。
憤り、嘆き、悟り、好み、愛し、遠ざかり、また近づく・・・

それでも好き、ということを判らせてくれたのがお千代さんでした。
とぼける知恵を教えてくれたのがお千代さんでした。
枯れた味わいを教えてくれたのがお千代さんでした。
視点を変えて見つめることを教えてくれたのがお千代さんでした。

美空ひばりに匹敵する、数少ない女性歌手が島倉千代子でした。
女優としても不思議な味のある人でした。
歌の台詞回しは新派の名優に通じる名人芸でした。
昭和の歌謡界の頂に存在する人でした。
紅白歌合戦の要にある人でした。
国民歌手の名がふさわしい人でした。

弟が作った借金に苦しみ、別れる夫が作った借金を背負い、恋人の借金を返すはめになり、やくざに騙され、チンピラに騙され、マネージャーに騙され、「私の家族」と認めた人に騙され、借金まみれの半生。
両親との不仲、姉の入水自殺。幼少期の左腕の大怪我。度重なる喉の不調。乳癌という大試練。3年間隠し続けた肝臓癌との闘い。

傍から見て、本当にむごい半生でした。
それでも、最期まで唄うことを止めなかった、お千代さん。
亡くなる3日前に、渾身の力を以てレコーディングを行い、絶唱を遺したお千代さん。
すべてを歌に託したお千代さん。
だからこそ、貴女が遺した1500曲を越える歌は一層輝いて聴こえるのでしょう。

「生きた・愛した・唄った」六十年の歌手生活を終えて、いまは「感謝の旅路」に発っているのでしょうか。
敬愛する美空ひばりさんや東海林太郎さんのもとへ、はせ参じているのでしょうか。
関係がもつれたまま別れた両親や、歌い手へのきっかけを与えたお姉さんと再会して関係を修復しているのでしょうか。あの世で歌っているのでしょうか。

お千代さん。
島倉千代子さん。

お別れという言葉が、今はピンと来ません。
お千代さんの、綺羅星のような歌の数々が、レコードやCD、音楽ファイルというかたちでいつでも聴けるようになっています。インターネット上にもお千代さんの歌や動画がたくさんあります。
これからも、聴き続ける人はいるでしょう。
また、お千代さんの死をきっかけに聴いてみようとする人もいるでしょう。

私も、大好きな大好きな「からたち日記」を聴いて涙を流し、「愛のさざなみ」を聴いて溜息をつき、「恋しているんだもん」を聴いて浮かれ、「くちべに挽歌」に夏の終わりを感じ、夜の空を眺めるとき「星空に両手を」を時々思い出し、「襟裳岬」に旅情をそそられ、「十国峠の白い花」にユートピアを想像し、「人生いろいろ」に滲む味を噛み締めていくでしょう。

「去るものは日々に疎し」ですからそれも徐々に減って、遠ざかっていくのかもしれません。
それでも、島倉千代子の歌は何らかのかたちで残っていくものと信じています。

お千代さん、長い間ありがとうございました。
決して良い聴衆ではありませんでしたが、大好きでした。

今しばらくは、今日だけは、今だけは言わせて下さい。
貴女は日本一の歌手のひとりでした、と。
by hakodate-no-sito | 2013-11-11 15:20 | 歌・唄・うた