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年齢不詳な若人が唄の話を中心にアレコレと・・・


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朝ドラ見聞録(1)「おていちゃん」と長門裕之

先日、NHKの公開ライブラリーに行って来た。
ここを利用するときは大概歌番組の視聴と決まっているのだが、見たい作品はある程度見尽くしてしまったせいか、その日はそういう気分になれず、画面操作中にふっと「朝ドラを見よう!」と思い立った。

そこから選んだのが3つの朝の連続テレビ小説。
どの作品も名優が光を放っていて、いろいろ思うことがあった。備忘録に書き遺しておきたい。

最初に見たのは「おていちゃん」、沢村貞子の著書「私の浅草」「貝のうた」を元に作られた1978年の作品だ。

何となく「おていちゃん」を選んだのだが、よくよく考えると、何日か前に見た「徹子の部屋」で津川雅彦を見かけたことが無意識のうちに影響を及ぼしていたのかもしれない。

念のため書くが津川は沢村貞子の甥。黒柳徹子は沢村のことを母さんと呼ぶ親しい仲。
「徹子の部屋」の最多女性ゲストは沢村貞子で、生前最期のテレビ出演も部屋だった程に相思相愛の絆で結ばれていた。

「おていちゃん」は既に原本たる映像が散逸・消失し、マスター映像は初回・最終回のみ、あとは視聴者からの寄贈品映像(時刻表示が入っている)が数本というお寒い管理状態になっている。

今回見たのは初回と最終回。
初回は放送当時の東京の空撮から始まる。相川浩アナウンサーの程よく抑制の効いた軽やかなナレーションも心地よい。現在の浅草の路上で朝ドラの説明を行う相川アナの「おていちゃん」という呼びかけで、袴姿の女学生スタイルのおていちゃん登場。彼女の説明台詞から明治の浅草へと移っていく。

歌舞伎の舞台を袖でじっと見つめる着流し姿の長門裕之。
長門裕之が色男の役なんて、と晩年の印象からそう思っていたが、とんでもない考え違い。
正面の顔はそうでもないが、横向きに映る全身のシルエット、半身がぞっとするぐらいに美しい。横顔も、目の輝きも。加えて時折ヒョイと聞こえる低音が恐ろしくセクシーなのだ。
イヤフォンを付けての視聴だから、余計に声が耳に響く。低音の声を聴いた瞬間、ガクッときてしまった。しばらくの間、放心状態に陥った。
男色の気はない男の自分がこうだ。女ならどうだろう。
いまなお語り草になっている著書「洋子へ」の話も、まんざら潤色ばかりではないと確信した。

晩年、そういう色香を感じなかったのは「洋子へ」での騒動で華やかな場所から長く遠ざかってしまったことの後遺症だったのか。長年の不摂生が祟って大病を繰り返したり、借金返済や介護費用工面に追われていて、身体がボロボロになっていたからか。単に私の見る目が無かっただけか。単にそういう役が来なかったから(そういう感じを)出さなかっただけか。

風貌ばかりでは勿論ない。その芝居の達者なことにも舌を巻く。科白の緩急自在さは勿論、目の配り、仕草。きめの細かい演技がビシッとハマる。それらがまた天性のものに思える(実際はそうじゃないかもしれない。だがこのぐらいなら考えなく出来るよという空気がある。長門の役どころは父方の祖父にあたる)。
相手役の日色ともゑ(劇団民藝)が緻密に計算立てて、きっちりこなしている感(最終回での老婆役ぶりは映像作品ということを踏まえた上での、程良い老けっぷりで感心した)があるだけに、対比するかたちでいっそう長門の才気が煌めいている。

他にも提灯の火を消して畳んでしまう動作をじっくり映して出すといった、細かい風俗の再現も至るところに見られた。こういう積み重ねがドラマを生かす土台になっていたのではないかと思う。
山本夏彦がコラムで、このドラマの時代考証の確かさを褒めていたのはどうやら伊達じゃないようだ。

手許にある「おていちゃん」のムック本によると、浅草オペラの再現もドラマ内で行い、田谷力三が本人役で出演し往年そのままに唄い踊った回もあるという。

喪われたとされる映像が発見され、まぼろしが蘇る機会があることを願ってやまない。
by hakodate-no-sito | 2014-04-29 13:23 | テレビ