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年齢不詳な若人が唄の話を中心にアレコレと・・・


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戦後50年とシャンソン 高英男

先日、高英男さんが出演した「題名のない音楽会」を観る機会に恵まれた。
自分の備忘録と、貴重な番組情報の記録を兼ねてここに感想などを記してみたい。

1995年7月16日放送「戦後50年とシャンソン」。
「題名~」の司会の黛敏郎は高英男と同時期にフランス留学していたことから親交を結び、ウン10年来の付き合いのある方。
黛はクラシック畑の作曲家ですが、日本劇場等の舞台音楽や映画音楽も多く手掛けるなど、音楽に関する造詣は大変深く、シャンソンにも通じ、高英男に限らず、石井好子、深緑夏代・・・と名高い日本のシャンソン歌手と仕事をし、「題名~」でもその人脈は大いに生かされていたという。

戦後50年のこの1995年、「題名~」では「戦後50年と××」と称した、戦後流行した音楽を振り返る企画が放送された。
ジャズ、シャンソン、歌謡曲と3回に渡った中の2回目に当たるのがこの回。

黛敏郎の談によれば
戦後50年史のジャズの回が好評で、ではシャンソン編を・・・と思ったとき、誰が良いだろうと考えたが、この人をおいて他にいない
となったのが高英男だったという。女性では石井好子がいるが、今回は高英男ひとりで、と。

※なおジャズ編のゲストは笈田敏夫だったと思う。
この歌手もCDが殆ど無く、日本ジャズボーカルの頂点とまで言われた、あの歌声が容易に聴けないのは異常事態だ。何とかして欲しいものである。

前書きはこの辺にして、本編について書いていこう。

歌:高 英男
司会:黛 敏郎
指揮、ピアノ:福田一雄
演奏:東京交響楽団、新音楽協会、
アコーディオン:江森 登
コーラス:東京混声合唱団

オープニングを飾るのは
1「ロマンス Romance」
(訳詩:中原淳一、作詩:H.Plante、作曲:Joseph Kosma)

1953年、高英男のレコードデビュー曲にしてヒット曲。
♪友よ聞き給え、この愛の歌・・・
という歌い出しであることも手伝い、高英男のワンマンショウなど舞台の1曲目はこの歌であることが多かったという。
近年NHK-BS2やスカパーe2のチャンネル銀河において再放送された「ビッグショー 高英男 わが夢は雪の彼方に」(976年12月26日放送)
でもオープニングはこの歌。

歌を終えて黛による演奏者及び曲名紹介、笑顔で握手を交わす黛と高。
舞台上に容易された椅子に座り、話を始める二人。
懐かしい旧友との舞台、黛は上機嫌。

1951年のフランス留学の想い出へ。高と中原淳一に少し遅れて黛もパリへ。
モンマルトルのクラブ出演のオーディションに出ることになった高、黛へピアノ伴奏を頼んだ。
「何歌ったか・・・僕、覚えていますよ(笑いながら)」
「いやー・・・何でした?」
「蘇州夜曲(笑いながら)、アハハ・・・」
自分は日本人、東洋人だから、この歌がこの歌が1番(あちらの人に)分かりが良く、仏語詩も付いていたこともあり歌ったという。
そのフランス語の詩で歌の出だしを口ずさむ高。会場拍手。

これが聴かせる。76歳でこの歌声である、30代当時の伸びやかな歌声ならばどれだけ良かったか、容易に察することが出来た。

「高さんがオーディション行く時にね、中原淳一さんが、紫の着物着せて。それに(タバコの)銀紙で紋貼り付けたの」
紋のほかにも、三日月や桜の花などの形も切って貼ったそう。
余程面白く忘れられない話らしく、笑顔で話す黛。

そして、その話から黛は、高を日本では珍しいシャンソン・ファンタジストの歌い手であることを指摘。「高さんの最も高さんらしい歌」と紹介し

2「幸福を売る男(Le marchand de bonheur)」
(訳詩:戸田邦雄 作詩:J.Broussolle 作曲:J.P.Calvet)

コーラスグループ・シャンソンの友が歌い、1959年から60年にかけてヒットした明るい曲調のシャンソン。
日本では高英男のほか
越路吹雪(訳詩:岩谷時子)、芦野宏(訳詩:薩摩忠)などの歌唱も知られているほか、宝塚歌劇団においても歌われている。
戸田邦雄とはフランスで歌手活動を行っている頃に知己を得て、訳詩をお願いしたという。
現在入手出来るCDやレコードでは聴けないが、この歌の間奏部分で笑いと励ましを交えたトークを行うのが定番であり、ここでも
「皆さん、お元気でしょうね?
まあこの頃近頃いろんな嫌なことばかりありますんですけど、皆さんのその朗らかな気持ちでそんなことを忘れて、これからも笑いながら暮らして参りましょう。
笑うのが一番良いんそうでございます。笑って笑って嫌なことを吹き飛ばしましょう。
♪笑って暮らそう 泣いちゃいけない 楽しく暮らそう
なんて歌って、もう僕も80(歳)近くなりました」

と、高英男一流の飄々としたトークを展開し、会場のムードを温かい笑いへ変えている。

続いて、シャンソン・リテレール。
フランスでは名だたる文人がシャンソンを書いている。
そんな文学的シャンソンの最たる例は私はこの歌だと思うと黛。

3「枯葉(Les Feuilles mortes)」
(訳詩:中原淳一 作詩:Jacques Prevert 作曲:Joseph Kosma)

ジャズナンバーとしても名高い、世界的スタンダードナンバー。
♪枯葉よ・・・の訳詩と共に高英男のヒット曲として知られた。
高英男といえば、枯葉、ロマンス、雪の降る街を・・・と上げて差し支えない代名詞的歌でもある。

「いろんな枯葉があります。イヴ・モンタンの枯葉も良いし、ジュリエット・グレコの枯葉も良いけれども高さんの枯葉はまた捨て難い独得の味がありますね。これが芸というものであり年輪であると本当につくづく思います」
黛敏郎のこの言葉だけで、この番組の存在意義があると思うし、黛の見識の確かさを私は感じる。

次は
シャンソン・ド・シャルム(魅惑のシャンソン)、シャソン・ド・サンチマンタル(感傷的シャンソン)の代表的曲の中から
高英男のレパートリーの中でも欠かせぬ1曲
4「モンマルトルの丘(Complainte de la Butte)」
(訳詩:中原淳一 作詩:Jean Renoir 作曲:Georges Van Parys)

あらゆる面から高英男を語るのに欠かせぬのが中原淳一である。
中原は多彩な顔を持っているが、高と組んだシャンソンの訳詩(作詩)も忘れてはならないと思う。

「戦後50年、これこそシャンソンという歌は何だろうということになって期せずして高さんと一致したのがこの歌でした」
「丁度僕ね、恋の熱烈な歌を歌う季節になりました」
と披露されたのが
5「愛の讃歌(Hymne a l'amour)」
(訳詩:中原淳一 作詩:Edith Piaf 作曲:Margueritt Monnot)

説明不要の世界的スタンダードナンバー。
この歌で番組は〆。

ダミア、「枯葉」作曲のジョセフ・コスマ、「愛の讃歌」作曲のマルグリット・モノー・・・
シャンソンの歴史を作った第一人者たちと交流があり、また自身もフランスで歌い活躍をしていた高英男。

「あなたのような人は貴重だ」と黛が番組内で話していたが確かにその通り。歴史を背負っている人であり、確かな芸がある。
声楽を基礎から修めた土壌がある確かな歌唱力、大舞台を満員にしたパーソナリティ、一流の話術、ビジュアル面・・・・。

何より観ていて楽しいのだ。「幸福を売る男」そのもの。
魅せて聴かせて楽しませて・・・決して媚を売るわけじゃなく品格が存在する。
トークはどこか飄々とした可笑しさがあって、その中にさらっと含羞のあることを盛り込む。
・・・こんなタイプの歌い手、他に知らない。唯一無二の歌い手だ。

大衆芸人でありたいと生前語っていた高英男。
庶民的、大衆的なものは日本では評価され難い。
だが、敢えてそういう道を辿り、シャンソンを歌い続けたということはひとつの見識であり、真似できない偉業だろう。私は忘れたくないし、忘れられてはいけない人だと思う。
by hakodate-no-sito | 2011-01-31 07:52 | テレビ