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年齢不詳な若人が唄の話を中心にアレコレと・・・


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「或る窓」 松尾和子VS平岡精二

松尾和子のCDを買った。
前々から彼女の歌は好きで、時々無性に聴きたくなる。

たまたまネットオークションを覗いていたら、前々から興味があった「或る窓」というCDが出品されていた。それもえっ!?という安値だ。出品終了時刻は間近に迫っている。
再販されて、10年近い歳月が経過し、もう入手が難しくなってきている。

―ああ、これを逃したら多分買えないな。
思い切って入札したところ、競争相手もなく無事落札出来た。

「或る窓」 松尾和子VS平岡精二_e0134486_15172590.jpg


ジャズ畑の鉄琴奏者で、「つめ」「学生時代」「謎の女B」など、作詞・作曲・編曲者としても才気を振るった鬼才・平岡精二が全作品を手がけた1976年発売のアルバムとくれば、楽しみにならないはずがない。

松尾和子と平岡精二の組み合わせの歌は既に何曲か聴いていて、どれも良い歌が揃っている。
特に「帰って来て」という歌がお気に入り。
シングル化された歌なのかは知らないが、ジャズっぽさとミュゼットぽさが融合されている名曲だ。「或る窓」には、私が持っているベスト盤LPに収められたVer.とは別テイクが収められているらしい。これも楽しみだ。

ということを、CD到着の数日前、別のSNSでつぶやいた。
しばし松尾漬けになりたくなって、PCの中の音楽ファイルや手持ちのCDを探して聴いて、到着に備えてモード作りをし、満を持して昨日、話題にしたCD「或る窓」が手許に届いた。

名盤、といえるかどうかはちょっとわからないが、なかなか面白い歌が揃っていて、一聴に値するだけのアルバムだった。
モーグというらしい初期のシンセサイザーが随所でフューチャーされていて、その音色も含めて、ツボにハマった。

第1曲目、ソフトロック調コーラスが印象的な「時計と女」にホーっと思う。
単独で聴くぶんには良いが、続けて聴くのはちょっと退屈を覚える曲(これは好みやモチベーションの問題でもあるだろう)が途中(レコードでいうA面部分)続くが、中盤以降は盛り返し、ジャズ歌謡からジャズと化す「爪」で〆。

期待していた「帰って来て」は、前述のベスト盤「松尾和子ベストコレクション'76」に収録されているテイク(小杉仁三・編曲)と比べると、モーグが前面に出ている分ポップス寄り、奏でられている音はJAZZYなのだが、に感じる。ただ、風邪気味だったか、松尾和子の歌声が鼻声に聞こえる。
そこだけが、ちょっと残念だった。

平岡精二の作詞センスは独特。
「学生時代」のような青春讃歌から、いわゆる日本の流行歌~歌謡曲の王道と一線を架している怪作も書ける人だ。幅は広い。

ふたりきりの姉妹の姉が、妹の不倫を諭す「ゆう子」。
どういうシチュエーションでこういう歌を思いついたのかが気になる。

原始の世界の男と女の恋愛を唄った「昔々の唄」は、アニメか漫画に刺激を受けたような気がする。
「はじめ人間ギャートルズ」か「原始家族フリントストーン」か。
「熟女B」とはまた違う、ナンセンスな世界が楽しい。松尾和子のキャリアでも、こういうコミカルな歌は珍しいのではないだろうか。ムード歌謡の女王が、心底楽しそうに歌っている。懐の深さに、こちらも嬉しくなる。

口笛から始まる爽やかな青春応援ソング「幸福の足音」。 歌手を変えたら石坂洋次郎原作・吉永小百合主演(主題歌も担当)の青春日活映画主題歌にもなりそうだ。松尾和子は過去を懐かしみ噛み締めながら唄っている感じ。爽やかというよりほろにが風味。前述の吉永や、ダークダックス、ペギー葉山でも聴いてみたい。

"作者自身の経験によるものでお酒の恐ろしさを唄った皆様のメッセージ"というナレーションからはじまる、精神病棟に入った女を唄った「或る窓」。
どんな歌だろうと身構えるが、ナレーションの割に案外軽めに仕上げられているので、歌詞に着目しなければ聴きやすいといえば聴きやすい。エディット・ピアフの「白衣」のような演劇的シャンソンを期待すると若干拍子抜けのきらいはあるが、それでも日本では珍しい類のメッセージソングには違いない。

コワさでは、むしろ「或る窓」の次に収められた「ふとい腕」の方が上回るかもしれない。
情事の夜の場景を唄った曲だが、「或る窓」の後に続けて聴くと別の意味が浮かんでくる。
・・・いや、単独で聴いても、充分インパクトある歌だ。

小粋なシャンソン風ラブソング「イニシアル」、、サバの女王風の歌謡曲「愛の怖れ」、メランコリーな「何も考えないで」・・・。どれも松尾がシングル曲として出しても不思議ではない出来に思える。

アルバムに収録された全12曲のうち、一番気に入っているのはラストに収められたジャズアレンジの「爪」と、レコードでいうB面1曲目である7曲目の「あいつ/パロディー」だ。

どちらも平岡の代表作で、今日も歌われている。
前者は既に松尾和子は持ち歌にしていることもあり、唄いっぷりも充分。間奏のジャズ的なセッションも含めて、聴いていてひたすら心地よい。歌手としての出自がジャズであることに終生強い愛着、こだわりを抱き続けたという松尾和子にも嬉しいレコーディングだったろう。

原曲準拠で、サラリと悩ましく唄ったテイクも別に存在するので、普通の「つめ」を聴きたい人にはそちらをオススメする。もっとも「或る窓」テイクはこのアルバムにか収録されていないと思われる。

後者では、題名通り、何と作者自身でヒット曲のパロディを作ってのけた。
こんなことをやってのけたのは、他に永六輔の「続・おささなじみ」(唄:デューク・エイセス)ぐらいしか思い浮かばない。

しかし、あちらは六輔流左翼的世相批判パロディ的要素が強いし、一応は続編という形式だ。
こちらは「あいつ」の歌詞にあわせて、歌詞で唄われている"君"がツッコミを入れていく。
そのツッコミは実に女ならではの辛辣さもあり、痛快ときに冷汗もの。

(あいつ・・・?あいつって誰なの?)
(あたしに恋人がないってことは、別にあなたに関係ないわよ)
(可哀想に。あなたって昔と変わってないわ)
(それもあたしに関係ないわ。せいぜいお悩みなさい)
(ああ、もう面倒くさいわ)

松尾和子の姐御キャラが存分に生きている。
松尾の声は、コケティッシュともいえるけど、それよりも意外にも(!?)キュート。
記憶にある松尾の声より高めなのは、まだ40歳ちょっとで若いからなのだろう。
それにしても、可愛い。ギャップ萌えともいうのか・・・ちょっと驚きが隠せない。
巨乳で気が強くて可愛い面もあって歌がうまい・・・ン?これって今時アニメの理想的なヒロイン(お姉さまキャラ)じゃないのか。
・・・萌えキャラだったのか、松尾和子。

松尾和子が歌う「あいつ」本編も、抜群のムードで歌っていて大変結構。
だからこそ、突っ込みが映える。おかしい。

ツッコミなしで普通に唄っている「あいつ」も聴いてみたいが、レコードはわからないがCDでは見当たらない。
レコーディングはしていなかったのだろうか。残念。

松尾和子、平岡精二。両者どちらも一歩も引かない、本気のぶつかり合いのアルバムだった。
名盤といえるのかどうかは、私には判断が付かないが、1度と言わず何度も聴きたくなる、時々聴きたくなる、独特のポジションを持った1枚であることは間違いないと思う。

平岡精二、松尾和子、両者のさらなる評価・研究・復刻が進むことを、強く期待したい。
by hakodate-no-sito | 2014-02-13 15:52 | CD視聴感想