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年齢不詳な若人が唄の話を中心にアレコレと・・・


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ひとりのおんな

自分の中の一部がもぎ取られたような感覚だ。
秋から冬への変わり目に届いた、女優加藤治子の訃報。
泣きたい気持ちをどうにか抑えている。

思春期、10代に触れたものは一生ものだ、という。
多感な時期に、どんなものを観て、聴いて、読んでいたか。
加藤治子の演技は、その時期にたっぷり見ることが叶った。

何から挙げていいのかわからない。
意識する前から、加藤治子は知っていた。見ていた。
「魔女の宅急便」だ、「浅見光彦シリーズ」だ、久世光彦が作っていた「向田邦子ドラマシリーズ」だ。
ピップエレキバンやら何やらコマーシャルにも出ていた。普通のテレビドラマにも顔を出している。
「古畑任三郎」にも出ていたはずだ。

好きだ嫌いだという以前から触れていた。

それが「寺内貫太郎一家」の再放送で一気に火がついたような記憶がある。
いや、「阿修羅のごとく」だったかもしれない。

ある、というのは気が付いたら惚れ込んでいたので、いつからというのは難しいから。
久世光彦の啓蒙活動の影響もあると思う。
どちらにせよ、高校のころには違いない。

慈母。
それでいて女性としての魅力もキープしている。

女。
それも業を強く滲ませた。

あの時期、散々昭和を彩る女優の演技に、のめり込むように触れていったけれど、
昭和の時代、平成の現在、どちらも並行して楽しむことができた数少ないが加藤治子だった。


もうお歳だから。
そろそろ見納めなのか。
彼女が八十路を迎える前後、静かに覚悟をし始めてつつあった。
しかし、こちらの心配をよそに、テレビドラマに主演したり、ジブリアニメに再び顔を出し、浅見光彦の母であり、天国のおばあちゃんと弾けた演技を見せたCMと
健在だった。年齢相応の認知症の老婆の役もよく回っていたが、相手役の夫はだいぶ年下の俳優ばかり、でも不自然さがない。
やはり彼女は凄かった。

気が遠くなるような、長い女優生活。
もとは松竹少女歌劇出身で、並木路子と同期だったはずだ。
御舟京子という芸名だった時代、榎本健一主演の映画に相手役で出演している。
エノケンの晩年にテレビドラマで共演した、なんて話ではない。
戦後でもない。戦前の話だ。

いろいろなことを思い出す。
それも新旧取り混ぜて。あれも見たい、これも見たいという想いにかられる。

山田太一がNHKアーカイブスに出演した際に自薦して再放送されたドラマがあった。
「いちばん綺麗なとき」。1999年放送。NHK。
出演は八千草薫、加藤治子、夏八木勲。

八千草の亡夫の姉役が加藤なのだ。一見和気藹々とした関係に見えつつ、徐々に見えるほころび、闇、亀裂。そして爆発。
八千草薫と加藤治子のぶつかり合いは、近年のドラマにはないクオリティだった。
山田太一の脚本も、演じられる女優を得たことによって輝きを魅せていた。

向田邦子脚本のドラマ「家族熱」。
三國連太郎の元妻。別れた夫と再会したことから、失った家庭への想いが再燃し、徐々に常軌を逸し、狂ってゆく女。

やはり「寺内貫太郎一家」だろうか。
ミツヒコと優しく呼びかける、あの母も捨てがたい。

久世光彦が並々ならぬ思いで作り続けた「向田邦子ドラマシリーズ」を選ぶべきか。
加藤治子も含め、名優揃いの「花へんろ」か。

最近見ている「だいこんの花」もいい。

いやいや、「阿修羅のごとく」だろう。
肌襦袢一枚で玄関に現れる加藤治子。うな重をなげつける八千草薫。
おもちゃのピストル片手に押し掛ける本妻役の三條美紀。
おもちゃのミニカーを鬼の形相で放り投げる大路美千緒。
どこを切っても凄すぎる。

ああ、どれだけ、私にとって好きな作品に出ていた人なのだろう、加藤治子というひとは。
勘定していくと山のように浮かんでくる。
見返していくだけで、思い返すだけでも、充分すぎる。

それでも、私は淋しい。そして悔しい。

気が付くと見なくなってしまった彼女。
90歳の加藤治子の演技を見ることができなかったことが悔しい。
90代の彼女の演技を、私は見たかった。
どう魅せてくれたのだろうか。

生きているだけでもいい、生き続けていてほしかった。

その人の持つ雰囲気で判断してほしいと、年齢を訊かれることを嫌っていた加藤治子。
92歳の大往生なんてことば、似合わない。

だから、私は惜しむ。明るく送り出すなんてことはしない、言わない。
by hakodate-no-sito | 2015-11-05 21:21 | 古今俳優ばなし